株式会社 Ohana本舗 赤嶺祐司さん

会員になってくれたお客様に農産物を直送するシステムでやろうと思います。

初年度の目標は600名。平成28年にはこの農場だけで3500名の会員に野菜を届けられるようにしたい。

株式会社Ohana 本舗は総合健康企業「フォレストグループ」の中の農業法人です。

Ohana」はハワイ語で家族や絆、つながりを意味する言葉です。

「安全にして安心な有機農産物を我々がこだわりをもって栽培しお届けすることで、健康な家族、温かい絆でつながる社会作りに貢献したい」という意味を求めて命名されたそうです。

 

 今は「アステム」という名前になっていますが、旧名の「吉村薬品」が母体のフォレストグループだそうです。

20年ぶりに帰郷した浦島太郎のような私にとって、大分の老舗企業が手がける農業法人という印象を強くしました。

 

 

 

臼杵農場の看板です。

赤嶺さんは、その農業法人「Ohana本舗」の代表取締役です。

新規事業の提案をしたら「じゃあ、やって」と一大事業をされることになったとか。

企業人として、きちんと数字の結果を残して来た方独特の「ザ、上司!」というような印象の方です。

具体的な数字がよどみなく、バンバン出てくる・・・島耕作の世界やなあ・・・と。

数字に弱い営業という、前代未聞のダメダメサラリーマンだった私にとって、最初は妙に緊張が走る方でもありました。

 

 

玉ねぎ2万3000株植えられています。

広いし、大量!

有機農家の皆さんはほとんどが家族経営です。

大規模でシステマチックに企業経営されているってどういう感じで出来るんだろう、とずっと思っていました。

今、Oana本舗さんは、大分市の中心部にあるわくわく館で毎日有機野菜を出品されています。

赤嶺さんと井上さんがマーケットの事について、私の店に訪ねて来て下さって、農場を見学させて頂くことが出来ました。

 

 

 

ハウスの入り口です。

臼杵市野津町の事務所に伺って、お忙しいにも関わらず丁寧に今後の運営について説明してくださいました。

医療・薬品の製造販売メーカーとして、人間の健康は「医療」だけでは賄えない、そこに「食」が無ければ、と考えたそうです。最初はでは漢方の原材料になるもの?健康に良いとされるオリーブのようなもの?そういうものがいいのかと思われたそうです。確かに単品で栽培すると利益は計算しやすい。

 でも目指すのは毎日の食卓の中で自然に続けられる健康。毎日食べるもので体は作られるので、「米」と「野菜」に基準を置こうと。

 そこで、多品目で常時出荷出来て、しかも旬のものを提供していく方針にされたそうです。

旬を大切にする、無理はしないことからビニールハウスの加温はしないそうです。

 販売の仕方は既存のルートに乗せず、店舗販売をメインにしないこと。一般消費者に直接届けるというやり方です。

「そんな野菜を求めている人を探して、渡したいと思っています。」

 

 

 

車内から、ずっと畑が続いてます。

このあたりは赤土ですが断層を挟むと

いろが全然違うそうです。

それに将来にわたって「必ず自社工場で育てる」という方針。

「どうしても規模が大きくなると、契約農家を増やしてそこで供給することがある。でも自分たちで育てています、間違いない育て方をしています、と太鼓判を押せるもの、品質に自信を持ちたい。」

 

また、有機JAS認定、JGAP認定を目指して準備をされています。

「一つの安心安全を客観的に判断してもらうわかりやすい材料になると思います。」

 

 

畑はきっちり、整然としています。

また、野菜の「味」ももちろん大事にしようと、美味しさを追求する方針です。そのため、モニターを募集して味の評価やアンケートに答えてもらったそうです。第一次は2~4月 応募人数は200名のところ、260名までになったそうです。第二次は5~7月。データを集めて、お客さんのニーズを探って、改良していく。システムも野菜の品質も。

今年の7月から本格的な会員募集を始めて、初年度目標は600人だそうです。

オプションも用意されてあって、先着600名には8月1回分のお野菜のお届けは無料。

9月の1か月は半額セールをされるそうです。通常の販売価格になるのは10月から。

 お野菜の量も二通りから選択できて、届ける頻度も月1回2回、4回のパターンの選択です。

 

 ホームページやFace Bookなどネットも積極的に活用されて、野菜の成長過程を会員が目で見られるように見守っているような実感がわくシステムを作ろうとされています。

 野菜の鮮度を保つように、宅配はクール便にこだわるそうです。そのため半径1キロ圏内に農場、集出荷場所冷蔵保存の場所も確保したそうです。

 

 

 

ハウスの一つ一つはとても大きいです。

案内して下さる赤嶺さん。

お話を聞きながら、会社員の時の空気を思い出しました。

組織で動くということは本当に大変です。全員が一つの目標に向かっていくための分かりやすい言葉が必要だし、目で見える形の数字も。

お客さんを全国に相当数抱えるということは、その顧客に対しても分かりやすい、さらに丁寧な説明が求められる・・・。だからこそ大きなことが出来るのだと思いますが。

 

最近、自分のやりたいことをやりたいように、誰にも説明せず好き勝手にやっている私にとって、(結局手伝わされる家族からは大クレームついてます。)コミュニケーションを真剣にしないと成り立たない場所である会社は身が引き締まる思いがしました。そして反省も。

 

 

 

 

 

ハウスの入り口には虫よけの細かい目のネットが。

会社から車で5分の場所にある農場に案内して頂きました。

畑は几帳面な方が一つ一つの作業を心を込めてしたような整然とした印象でした。

土がきめ細やかに整っていて、畝がまっすぐ。支柱も曲がったところがない。美学を感じさせるような作業のあとがありました。綺麗です。

ゴミ一つ見当たらないハウスの中は、やや赤い土。

虫食いも見当たらないカブの青々とした葉。スイートキャロット。まばらに草が生えていましたが、普段は草が全く見当たらないほど丁寧に手を掛けて作られているそうです。

農場は3人だけ。相当な忙しさです。

 

 

  農場長の萱嶋さんです。

農場長は40代の萱島さん、30代の椎原さん、先日入ったばかりの20代の長谷部さん。

世代がそろっていて、技術を受け継いでいけるようにしている、とのこと。

会員モニターの方の野菜の評価やアンケートに答えてもらう徹底したリサーチをもとに、昨年は試行錯誤を繰り返したそうです。

 

お会いできたのは、長谷部さんと萱嶋さんです。

長谷部さんは黙々と集中して働く姿が容易に想像できる感じの方でした。「おっ、体育会系出身かしら。」と思わせるようなはきはきした挨拶をしてくださいました。

 

 

 

 

 

草と野菜の境ははっきりしているほど

行き届いた手入れ状態です。

 

 

 

スイートキャロットを抜いてくださいました。

煮ると少しほこほこした不思議な食感でした。

美味しいです。

 

農場長の萱島さんは農学部出身ですが、実際の農作業とは別の仕事についていて就農の機会をうかがっていたとか。新規事業が立ち上がった時に、誰に農場の責任者になってもらうか赤嶺さんが考えていたところ、臼杵市役所の方から萱島さんを紹介されたそうです。

「ピンとくるものがあった」面接はその場で即採用!スカウト!だったとか。

そのあと一年間、萱嶋さんは犬飼町のベテラン有機農家の方のもとで研修をされたそうです。

 

赤嶺さんが一目ぼれするのも、何かわかるなあと思えるような穏やかで朗らかな印象の萱嶋さん。

「それなんですか?」を連発する私の質問にも丁寧に答えてくれました。

 

 

 

手前はカブ、奥がスイートキャロットです。

臼杵といえば夢堆肥。有機の里らしく、行政が力を入れて有機農業を応援していく体制になっています。

「うちももちろん使っています。でも誤解している方が多いのですが、夢堆肥は土壌改良のためのものです。

その上でまた別の肥料が必要です。うちはMREというものやアミノ酢糖を使っています。大分市の会社が作っている肥料です。」

 

「農業は気候に本当に左右されます。この辺はマイナス7になったのでビニールハウスの周りが凍ってしまった。

うちのハウスは加温しないので、てきめんでした。葉物への寒さの影響がでてミズナは千枚水菜といって軸が少なく葉だけになってしまうものもあった。野菜が寒さから身を守るためにそういう姿になることもある。食べたら結構美味しかったけど。」

 

「根菜は抜いた時に姿が見えてわかる。ちょっと水が足りなかったな、とか。畑への水がコントロールできる畑灌というのを使っているのでわりと調節はしやすいですが。寒いとホウレンソウや大根はやっぱり甘味が出て

美味しい。」

 

 

 

畑灌です。

以前引いたものを見つけるのも大変だったとか。

路地栽培で平均20種類の野菜、ハウスだと4種類くらいで計画されているそうです。

端境期の3~4月はやはり種類をそろえるのに苦労されたそうです。土地に合う農作物を見つけて、会員の方の注文に年中答えられるように、サイクルを考える。

 

 考えてみたら相当責任の重い仕事です。自社農場だけで、という方針なら他で調達することもできない。

それでも萱嶋さんは、「今年の試行錯誤は大変でした。いろいろ失敗もしたし。あきらめも肝心かな。すぐに決断して方向転換していくのも大事です。畑をつぶして、気持ちを切り替えて次に進む。責任は重いけど、好きなことをまかせてもらって、自由にさせてもらっているので楽しいですよ。」

 

 

      ハウスのカブです。

      何か土が清潔な印象です。

この農場が順調に進めば、九州各地に拠点となる農場を増やしていきたいそうです。

「集出荷のためのパート勤務を含めて、地元雇用にも貢献できるようになるかも、食育や土に触ることでセラピーになる療法の手伝いもできるかもしれない。 個人の健康状態に対応できる、機能性野菜(頻尿に効く、とか血圧に効くとか)そういうものも研究して提供できたら。」

 赤嶺さんのこれからの展望のお話も農場では一層生き生きと聞こえました。

 

 ちなみに整然した畑は、赤嶺さんにお聞きすると椎原さんの几帳面さによるところも大きいそうです。

 

 

 

アートやな・・・の域の整然とした畑です。

印象的だったのは、萱嶋さんからお聞きした臼杵の給食畑の野菜のこと。

Ohana本舗さんでも参加できないか、お話を伺ったそうです。でも今供給している畑で維持できているとのこと。

無理に参入しないことにしたそうです。

 

給食の事業は、野菜を提供している地元農家の方の生きがいになっているそうです。

特に高齢の方は子ども達からお礼を言われたり、子どもたちの体を作っている一助になっていることにものすごい喜びを感じているそうです。

 

 奈良オーガニックマーケットの榊原さんが給食を変えるには、第一に

「生産者がこの野菜を子どもたちに届けたい、という強い意志が必要」と言われていましたが、私は勝手に、使命感や強い義務感で頑張らないといけないこと。と思い込んでいました。

結構、大変なことだよなあ、と。

 

 でも実際にこどもたちの給食を作っている生産者の方が、使命感や義務感ではなくまず「喜び」を感じていることに驚きを感じました。目からうろこ・・・。新しい発見もいただいて帰りました。

 

 

 

 

    何から何まできっちりしていました。

    ビニールひとつ掛けるのも実は技術が必要です。

赤嶺さんは野津町出身で、毎年ご自分でもお米を作られるそうです。自家用に、ということですが赤嶺さんのお米がどうしても欲しい、と毎年収穫を楽しみにされている方もいるそうです。

 

新規の事業を立ち上げて、どこでやるかと考えた時に全ての条件が揃っていたのが故郷の野津町だったそうです。

事業として数字を出して計画されている方でしたが、土から離れた計画をされる方のような気がしませんでした。

社員の皆さんの印象も明るい感じでした。

いきなりマーケットの準備を任された新入社員の祐原さんも、ものすごく一生懸命な方でした。

私が伺ったその日のうちに赤嶺さんの指示のもと、会場を見に来られました。やっぱり仕事はスピードが大事なんですね。また反省・・・。

祐原さんにはキラキラした瞳で質問攻めに合いました。私、こんな時期あったかしら。いや、ない。

きっと野菜がよりおいしく引き立つようなディスプレイを真剣に考えて来られると思います。

 

 

 苗を頂いてしまいました。

 ミニピーマンとトマトと唐辛子。

 

 トマトは葉が萎れるくらいがいいそうです。

 愛が足りないらしく、植物をちゃんと育てられません。

 やれるかな・・・。

赤嶺さんの口から、「売上」や「売る」という言葉は不思議と出てきませんでした。その代り聞いたのは「届けたい」です。有機野菜の供給が需要に間に合っていない、と言われていた宇佐の佐藤農園の佐藤さんも「届けたい」と言われていました。

 

 安心できるものを常に手に入れたい、と願う会員になる消費者のニーズに応えていくことはとても大変だと思います。でも体力のある企業の強みを生かして着実に準備を進められています。

会員になる消費者の方に畑の状況を説明し、野菜が育っていく様子を伝えることによって、きっと消費者の理解も深まっていくと思います。

 

 いつも野菜があることが当然ではないこと、端境期はいつなのか、育って当たり前ではないこと、毎年同じではないこと、天候に左右されること、そして九州も寒い!ということなど。

 また、モニター会員の方も「こんな風に料理しました」と写真を送ってくれるかたも少なくないそうです。そんな方々の信頼に応えていこうとされている企業なんだと思いました。

 

 

ズッキーニ、育っています。

私は震災の時に東京で会社員をしていました。妊娠中で原発事故の影響が子どもにどのくらいの影響を与えるかとても怖かった。不安でした。神経をとがらせて生活をしていました。精神的な不安が体を痛めることを経験しました。

 

この先、日本全体で食糧を賄っていく準備が必要なのではないか、という不安はどうしてもぬぐえません。

大企業が有機農業に参入することについて、いろいろ意見はあるかもしれないですが、

このお野菜は赤嶺さんと社員の方と萱嶋さんと椎原さんと長谷部さんが作っている、と私は感じました。

この先もそういう気持ちでOhana本舗さんのホームページも拝見するだろうと思います。

 

 

 

 

個人的に欲しいアイテムNo.1

地下足袋。

萱嶋さんの動きが軽やかです。

このせい?

「配送するときの梱包もまず、丁寧に。ラベルシールもずれないようにきちんと張る。そこに心が現れると思います。」

トップの意識が組織を動かす、とか何とか島耕作も言うてたし・・・。

几帳面な畑の様子は赤嶺社長によるところも大きいとおもいます。