生まれたばかりの息子がアトピーだったと知って、かなりショックを受けていた時期に是恒さんの「粉」に出会いました。
元気な声で「大丈夫。この小麦粉でお菓子も作れる。この玄米粉でお団子も作れる。エネルギーのある食べ物を私は作っている、こどもの好きなものを作ってあげたらいい。喜ぶよ。心配ないよ。」と言って明るく励ましてくれました。
それから何度も是恒さんには「大丈夫。心配ない」と励ましてもらっています。
大豆畑。草の中に大豆が並んでいます。
是恒さんは、米、大豆、小麦、古代米など生産されています。全て無農薬・無化学肥料です。
無化学肥料どころか「無施肥」全く肥料を与えない状態で生産されています。
「必要なものは全て太陽や月や地球のエネルギーでまかなえる。そんなに難しい事はしていない。」と
言われていました。
私にとってありがたかったのが、手に入れるのが難しい無化・無農薬の小麦を生産されていることです。
アトピーは体に出る部分でどのような食べ物が原因なのかわかる、と言います。
息子は口の周りや首のまわりがひどく荒れていました。「小麦」らしいのです。母親の血液が汚れているから子どもに出た。と言われて思い当たる節がありました。
妊娠中に異様にスパゲティやうどんが食べたくなって、よく食べていました。
市販されている小麦製品のほとんどは輸入小麦です。収穫後にかける農薬「ポスト・ハーベスト」はそのまま食べる人の口に入って来ます。それに反応しているのではないかと。現にアレルギーテストをしても食べ物に関しても何の反応もありませんでした。
体の解毒反応としてのアトピーだととらえて、無農薬・無化学肥料の野菜とお米の力を借りて息子のアトピーは治りました。是恒さんの玄米餅や小麦粉や餅粉で作ったおやつや目先の変わったメニューも子どもの好物です。
黒豆がはじけそうです。
是恒さんの畑に伺ってお話しを聞きました。宇佐の文字通り「田畑地区」の中の畑の中で待ち合わせ。
最初に案内して頂いたのは大豆と黒豆畑です。
収穫の時期を迎えてさやがはじけた豆がちらほらあります。沢山の種類の草の中に豆の茎が規則的に
並んでいて「あ、大豆畑なんだな」と分かります。
収穫はどのようにするのかと聞くと「草と一緒に刈り取って、脱穀して選別する。選別するのは大変な手間よ。ははは。」「でも草と刈り取るのは簡単。だって収穫の時期になると茎はぱきぱきと折れて収穫しやすくなる。ほらね。」とやって見せてくれました。
豆のくきをぽきぽき折って
収穫してみせてくれる是恒さん
豆も無施肥です。でも水分の管理が出来ていないと美味しくはならないそうで水はけ対策がるそうです。
畝と畝の間に溝を作るそうです。そして草対策は刈り取った草を土にかぶせていくと、日光が地面に当たらなくなるので草の生育が阻まれるそうです。
でも「草を刈り取るために畑に入るのは、花が咲くまで。花が咲いたら畑には入らない。だって受粉してさやを作る大事な時期だから。そっと静かにしておいてあげないと。」
たくましい稲の根元の茎
田んぼも見せて下さいました。
稲刈りが終わった後の、日光が当たって広々とした清々しい田んぼでした。もう14年間も一切の
化学肥料を含む肥料も農薬も使っていないそうです。
刈り取った後の稲の茎は太くてしっかりしていました。
是恒さんはご結婚されて三人のお子さんを育てられていますが、元は関東で旦那さんは会社勤めを
されていたそうです。旦那さんの実家の宇佐に帰られて農業を引き継がれることになったとか。
でも、ご自身もアレルギーになって「食」の勉強をされていたので、実家にあった山とつまれた化学肥料を
「使うなら私は一切の農作業はしない。勤めに出ます。」と言って処分されたそうです。
「私は土を守った。」と言われていました。
刈り取った後のたんぼ
農業にはそれぞれが経験の中で培った方法があるので、あくまで私のやり方、として説明下さいましたが
畑はほとんど土を掘り起こさない不耕起です。田んぼは水をフラットに張らないと土の部分が出て
草が生えるのである程度土ならしは必要だそうです。
14年間、農薬も化学肥料も使っていない田んぼには虫の被害や病気は出ないそうです。
畑も同じく、虫も特によって来ない。
「虫がもし食べるとしたら人間が食べて問題のある植物の部分。食べる事によって分解して解毒して
自然界に戻してくれる。害虫はいないよ。ありがたいね。」
「人間も同じ。体や心が弱ると病気になる。健康な土には抵抗力がある」
「そういう力のある食べ物を口にしていたら、人も性格変わってくるよ。本当。」
是恒さんの田んぼと畑では自然の循環というものが本当に起こっているんだと説明を聞きながら思いました。
「虫対策をしなくてもいい、本当にいい土が出来るとそうなる」という事を半ば年伝説のように半信半疑で思っていたので、その状態になっている田んぼを見て「ここがそうなのか」とじっと見てしまいました。
土の下にはわずかな草が生えていた田んぼ
しかし、収穫量は少ないそうです。
田んぼは化学肥料を使えば平均一反8俵はとれるそうですが、是恒さんの田んぼは平均して4~5表。
約半分です。でも昨年はもっと少なかったらしく一反2俵だけだったそうです。
しかも小麦に至っては来年のための「種」の分しか取れなかったそうです。「わかる?これだけの面積で種だけよ!すごいでしょ。ははは。」どうも麦は生育過程でかなりの栄養を必要とするらしいです。毎年、課題がある、難しいと言われていました。
田畑の管理も人任せにはしない、自分の目でいつも見ていないと。肥料や農薬を使うと手間は省けるのでやっぱりそれに頼ってしまう事になりかねない。大変だけど人任せには絶対出来ない。と言われます。
小麦も電動の石臼で自家製粉されています。風味が豊かで美味しいです。
是恒さんの稲穂
育てる作物の種は「自家採取」されています。
私は最初、何故それが大事な事なのか分かりませんでしたが、いろいろな方から「世界を支配する種の話」を聞いて「それは相当、気持ち悪い」と率直に思いました。
今、市販されている「F1の種」は人間の手によって作られた一代限りの子孫を残せない植物の種です。
実がならない植物を掛け合わせて作られたそうです。その種で作物を作ると品質も大きさもそろって同じものがとれるそうです。でも種はとれません。農家は毎年、種を買わざるをえない状況を作りだされています。
また、子孫を残せない遺伝上の異常を持った種から育った作物を食べ続ける事が人間にとって何の影響も無いと言い切れるのか。いのちを繋いでいく仕組みを持った植物の世界を一代限りで終わらせるという、「循環」を途切れさせるような事がなにかとても恐ろしい、と感じました。
「種は私の宝」
是恒さんの田んぼと畑の健全な土で育った植物の種。その中には力強いエネルギー健康な遺伝子が詰まっています。
あぜ道を車で華麗に移動する是恒さん
とにかく広かったです。
太陽と月と地球のエネルギーだけで、自然の中で農業をやっていくと自分も自然の中にいると実感出来るそうです、「私は、宇宙と繋がっていると感じる。」誰しも地球人なので、宇宙とつながっているはずです。でもそのことを「実感」して生きている人って案外少ないかもなあ~と思いました。
広い面積の田んぼと畑の土をならして、種と苗を植えて、草対策をして、収穫をして、手作業で選別して
加工する。大変な手間と労力です。しかも収量は少ない事もある。
「でも、それが楽しい。私はたのしくてたまらないからやっている。何の苦しい事もつらい事もない。本当にやりたい事はやっていて楽しいのよ。あなたもそうでしょ。」是恒さんの瞳が活き活きと輝いていました。
明日は大阪、福岡、大分市内と「食」の勉強会や農作業にと縦横無尽に駆け回る是恒さん。
多分エネルギー源は自家製の米と豆と小麦と野菜。とにかくパワフルで明るくて。
「食」も大事。でも心が一番大事。と言われます。
私は是恒さんにいつも励まされます。そして何故か泣けてしまうくらい、あたたかな人です。